全国の様々な美術館が老朽化し改修工事を行いリニューアルされていますが、京都市の岡崎公園にある京都市京セラ美術館は、改修のコンセプトが像を重ねていく美術館で、改修による様々な工夫を楽しむことができるためお勧めです。京都市京セラ美術館は、明治以降から平成2年頃の洋画や日本画、工芸作品等を楽しむことができる美術館ですが、改修に関して注目すべきポイントは、エントランスや本館、新館となります。
エントランスについては以前の正面玄関には手を加えず、一段掘り下げた部分に新しい玄関となるガラス・リボンを作り、元のイメージを壊すことなく機能的な入り口を作ることに成功しました。ガラス・リボンには、ミュージアムショップやカフェが存在し、買い物や食事を楽しむことができます。一段掘り下げたことで、平安神宮の大鳥居が建つ神宮道から入口へ向かうスロープ状の広場となる京セラスクエアができ、コンサートやイベントを行うことが可能となりました。本館の旧大陳列室は中央ホールとして生まれ変わり、非公開だった南北の二つの中庭も天の中庭や光の広間として使用できるようになりました。天の中庭は空を見上げることができるスペースとなり、2階にバルコニーを設置してガラスの屋根をかけた光の広間は、イベント会場等として使用することが可能です。
中央ホールの奥では、目立たなかった日本庭園も楽しむことができます。以前から日本庭園は存在していましたが、裏手に存在していたため注目されることはありませんでした。本館の東側には新館として東山キューブが誕生しました。約1000平米の面積に高さが5メートルある空間に、現代美術等の作品が展示することができます。東山キューブには屋上庭園となる東山キューブテラスが設けられました。東山の風景を満喫すことができますが、公の空間となるため、展覧会に入場せず展示を鑑賞しない場合でも景色を楽しむことができるためお勧めです。京都市京セラ美術館は現存する公立美術館としては最も古く、和と洋の意匠が融合する帝冠様式として知られる歴史的建造物ですが、展示する場所が狭いことや老朽化等が問題となり、開館から80周年を迎えた2014年に再整備が検討されました。2017年にはネーミングライツパートナー企業も決定し、2018年から工事が行われましたが、工事によって新しい施設が誕生しただけではなく、以前の建築を維持しながら、見過ごされていた新たな魅力を掘り起こすことに成功しており、リニューアルのコンセプトを見事に実現しています。親しみのある外観を愛でながら、楽しく美術を鑑賞することができます。